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ホテルウェブサイトで勝つための四大要素

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ネットワイズでは今夏、世界各地のリゾートバカンスを取り扱っている、欧州のある旅行会社の依頼を受けて、日本における宿泊施設・観光市場及びそのウェブサイトの包括的な調査分析を行いました。同社は日本市場に深く浸透し、且つ進出していくための道筋を模索しており、ネットワイズに市場情報の収集及び、現行のウェブサイトでのユーザ体験や予約プロセス、ソーシャルメディア戦略やデジタルマーケティングを向上させるためのアドバイスを求めておりました。この調査の全てをここにご報告するわけにはいきませんが、調査で浮き彫りとなった、日本におけるホテルウェブサイトのいくつかのポイントを、この場を借りてご紹介したいと思います。

リサーチ領域

Ritz CarltonFour Seasons,などの五つ星ホテルから、国内屈指のリゾート地であるニセコ、沖縄に渡り、国内の主な一流ホテルウェブサイトを50サイト以上を分析しました。以下、今回調査・分析したホテルの一例です。

 

ホテルウェブサイトの分析に加えて、30歳から65歳までの100人を超える男女を対象に旅行・観光に関する実態調査を行いました。 これら対象者の回答は以下の4大要素を選ぶための重要な鍵となりました。それではさっそく見てみましょう。

1. モバイルへの最適化

今回調査・分析したホテルウェブサイトのうち、83%のサイトがモバイルにも適用できるレスポンシブデザイン、或いはモバイルに最適化した別サイトを採用していました。今日ではホテルウェブサイトにおいて50%に至るアクセスがスマートフォンなどの携帯デバイスから行われています。必然的により高度なスマートフォン対策が求められているわけです。ホテル関連クエリを示した2015年9月現在のGoogleデータをみても、前年比の27%増でモバイルからの検索が行われていることがわかりました。ユーザに具体的なニーズが発生した瞬間、旅行について簡単に調べたり、計画したりできることができる、いわゆるマイクロモーメントが、ごく日常的にスマホやタブレットから行われており、そこに商品やサービスが待ち構えているのです。先日発行されたThink with Googleの記事の中で、旅行・観光業界におけるカスターマージャーニー(購入過程)の最近傾向ついて著者はこう書いています。「過去一年間に旅行業界において、スマートフォンを使用したウェブサイトの訪問者は48%にも達し、そのコンバージョン率は88%増えました。」

この数字は衝撃的であり、購買意欲旺盛の消費者がショップのドアをたたきにやって来るとき、その場にある商品やサービスの重要性を裏付けています。今日、モバイル最適化は、「あれば良し」というものではなく、必須要素であるということなのです。2015年に開発されたものを例に挙げて言うと、 このところのウェブサイトの傾向は、モバイル対応の別サイトを持たずに、デザインを様々なサイズに伸縮できるレスポンシブサイトが主流です。

Booking form (mobile), Mandarin Oriental

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二つの個別のコードやコンテンツを携えたウェブサイトと比較すると、レスポンシブサイトを持つことは、価格も抑えられますし、単一サイトだけのメンテナンスや更新で全てのスクリーンサイズに対応されるので、当然管理も簡単になってきます。簡単に管理できるのは、部屋の詳細や施設紹介、最新情報などのコンテンツページだけではありません。宿泊予約やレストランのテーブル予約など、機能面においても十分に適用されることなのです。 これらの機能がきちんと動作しているかを確認することは、コンテンツがページにきれいに収まっているかよりも重要であるといえるかもしれません。マンダリンオリエンタルホテルの予約機能の最適化は優れた一例だといえます。 しかしながら、こういったサイトはまだまだ一般的とはいい難く、多くがモバイルサポートには重要な分野が、未だにきちんと動作せず、見た目も悪く不完全である場合が多いのです。

2.海外からの観光客を掴む

日本へ来る観光客は、近年増加の一途をたどっています。そのため、様々な外国人観光客に適したサービスがホテル側にも求められています。そして、今、この時も多くの見込み客が海外において、日本での宿泊先をインターネットで探しているのです。彼らが誰で、どこから来たのか、そしてオンライン上でどうやってあなたを見つけたのかなどをきちんと把握しておくことや、或いはそこからビジネスを得るための戦略を立てることは企業収益において重要な意味を成します。ちなみに「 どこから来ているのか」に関しては観光庁が発表したデータをみるとその数字がわかります。今年の第3四半期に日本を訪れている観光客のうち、大多数はアジアからで、その内訳は中国31%、韓国19%、台湾18%、香港8%、次いでアメリカの4.8%です。

海外からの観光客の構成比や、「どこから来ているのか」に関しては、既になんらかの知識をお持ちかも知れません。ですが、ここで重要なのは、この海外からの観光客の多くが、あなたのドアまではたどりついてはいないということなのです。オンライン上で容易に見つけてもらい、この見込み客をしっかりと掴む。この成長市場で確実なシェアを得るためには、惹きつけるメッセージをユーザの使用する言語で、且つ快適なユーザ体験で提供することが必要不可欠なのです。見込み客を素通りさせずにしっかりと掴む方法として、 一つはっきりと言える事は、ユーザの使用言語で、つまりは、多言語で、コンテンツや予約機能を提供するということでしょう。私たちが調査したほとんどの一流ホテルのウェブサイトは、実際に日本語、英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語を使用していました。

The New Otani website

だからと言って、全ての言語で完全に同じ仕組みのウェブサイトを管理、製作することは実用的でないかもしれません。見込み客を完全に引きこむためには、最低限、施設、レストラン、部屋、空室状況、予約機能は、全ての言語で提供する必要があるでしょう。多言語サイトを製作するには、必要最低限のコンテンツや予約機能などで構成されたマイクロサイトを複製することから手始めにやってみるのもいいかもしれません。そうすることで、複雑な完全ウェブサイトの更新に関連するコストや労務費を抑えることにもつながります。ホテルニューオータニ東京ステーションホテルはこの手法でウェブサイトをローカライズしています。

国際的にホテルを展開している会社にとっては、欧米各国のウェブサイトに適用してきた単一のデザインは、日本では通用しないということも重要なポイントです。とかく欧米では、洗練され、整然とした、ウェブ上でプロフェッショナルなブランドイメージを持つことが、高級ブランドであればあるほど重要視されていますが、日本の典型的なインターネットユーザは、多量のテキストを含んだコンテンツで、どこからでもすぐに詳細情報や仕様へのアクセスができるウェブサイトを使い慣れています。 そういった環境なしでは、不満を募らせ、成約画面まで進んでいかないかもしれません。

また、ローカリゼーションの品質も重要な要因の一つです。今回行った、100人の日本人を対象とした調査では、ウェブサイトがうまくローカライズされていなかったり、おかしな日本語が使用されていたためにその会社を信用できずに、実際に購入を見送ったり、ビジネスを持ちかけるのをためらった経験があると答えた人が実に84%にも上りました。 (例:以下のように、本来日本語がくるべきフィールドに中国語が入っています。) ことに日本市場においては、特殊なニーズ及び期待があり、それを満たすことは、デザインや情報アーキテクチャ、ユーザ体験のグローバル基準に沿わなくなるとも言えるでしょう。

Ritz Carlton L10N

3.使い心地のいい予約システム

今回の調査で明らかになったことに、日本のホテルウェブサイトは、円滑で効果的なユーザ体験をあまり重視していないということが明らかになりました。それは、ウェブサイトの肝ともいえる予約機能においてもそうでした。 東京ステーションホテルを例に挙げますと、一見、一般的なフォームであっても、ユーザに不親切な点がいくつか見受けられました。

tokyo_station_hotel_booking

最もわかりやすいのは、日にちを選択する際にカレンダーが表示されない点です。 その代わりに、ドロップダウンだけでリストから日にちを選択する仕組みになっていますが、日にちには曜日が付随表記されていません。他にも、このフォームでは、予約プロセスに入るまでに何度も何度もクリックしなくてはならないなど、使いやすさからは程遠い仕上がりになっています。それに比べてフォーシーズンズは、

The Four Seasons booking form

ワンクリックで、必要なすべての項目が入力できる画面へとアクセスできる上に、二か月分のカレンダーもわかりやすく表示されています。更にすばらしい一例に、インターコンチネンタルの英語サイトがありました。

InterContinental Hotel website booking form

カレンダーやフォームをできるだけ小さく表示させた、クリック誘導型にせずに、カレンダーよりフルサイズで日にち、宿泊日数が選択できます。また、曜日、選択した日にちをきちんと目立つ場所に表示させています。その他、表示自在の More Options リンクやクリックで増減できる宿泊人数など、大変使やすくなっています。

IC Tokyo - Booking (More)

ホテルにご宿泊のお客様に快適な滞在をしていただきたいでしょうか。そうであるなら、同様にウェブサイト上でも快適なユーザ体験をしていただくことが大切ではないでしょうか。せっかく素敵なホテルに滞在していただくのですから、オンラインで予約をする際にも快適なサービスを提供してあげるべきでしょう。また、もし上記で述べたような言語を全てサポートするような予約エンジンをお探しなら、Sabre社のSynXis Booking Engine は必見です。このアプリは今回調査したほとんどのウェブサイトで実際に使用されており、アジアや英語圏から来る旅行者に対応しています。

4.コンテンツマーケティングの活用

顧客にオンライントラベルエージェント(OTA)よりも先に自社のサイトを見つけてもらい、直接予約してもらうことは、日本国内のホテルだけでなく、世界中どこのホテルであっても、一種の挑戦であるかもしれません。では、頻繁に自社のウェブサイトに直接来てもらって、顧客経験価値を独り占めにするにはどうしたらよいのでしょう。広告を打ち出すというのも一つの手立てです。しかしありきたりのこの手法にはけっこうな費用が発生します。その代わりにコンテンツマーケティングを利用するのはどうでしょうか。そもそもコンテンツマーケティングとは何でしょうか。ウィキペディアによると、

コンテンツマーケティングとは、顧客を獲得したり、とどめたりするためにメディアをシェアしたり、コンテンツを公開したりすることを含む、あらゆるマーケティング方法とあります。

言い換えれば、コンテンツマーケティングとは、明確に定義された観客を惹き寄せ、とどめるために、その観客にとって価値があり、その定義に関連するコンテンツを作成・発信することに焦点を当てた戦略的なマーケティング手法です。突き詰めると、見込み客の行動を操作するということになります。それでは、ホテルウェブサイトとして、多くのアクセス数を稼ぐためには、どんなコンテンツを作成すればいいのでしょうか。ここで重要なのは、まず顧客のウェブページ上での購入までの経路を解析することです。その経路を解析した上で、 顧客に具体的なニーズが発生した瞬間(マイクロモーメント)はどこにあるのでしょうか。そのとき、あなたはそれに関連する、有益な情報としてどんなものを提供できるでしょうか。 Travel Trends article に書かれている記事から考えてみましょう。

  • 切望の瞬間
    「東京でするべきこと」や「福岡の所在地」等の質問に答える形のコンテンツがあれば、どこかに旅行したい見込み客がにあなたのページにたどり着く可能性は断然高くなります。コンテンツにエリアガイドや観光情報等を入れておくと、顧客にはもちろん、提供者にも顧客との接点となり、プラスになります。
  • 計画の瞬間
    訪問者に観光地への公共交通機関での所要時間や入場料等、旅行計画へのヒントを提供すれば、無駄なく綿密に旅のプランを立てようとしている人たちの役に立てるはずです。
  • 旅行の瞬間
    現地でもさらに、ホテルまでの交通、レストラン情報、両替情報、ショッピング情報などが必要です。それらに応えてウェブページはきちんとした働きをしてるでしょうか。これらの情報は宿泊客だけに対するものではありません。同様に、現在地から近隣のレストランやホテルを探したりしている人々も呼び寄せられます。役に立つ情報を提供することはその両者によりよいサービスを提供することに繋がりますし、旅行を楽しんでいただくお手伝いにきっとなるはずです。

 

つまり、これらの瞬間に常時応えられる体勢でいるということは、彼らの最高の思い出作りに一役買いつつも、顧客(或いはそうでなくても)が求める一番近いところにいるという利点があります。よい経験をした人は、その体験をブログでも報告してくれますし、口コミも投稿してくれるでしょう。友人や家族にも報告するはずです。これらを可能にするのは、ウェブ上で 邪魔にしかなってない従来の広告ではなく、ユーザが検索したり、見つけたりするようなコンテンツを作成することにあるのです。

コンテンツ戦略の一環として、動画作成にも注力したほうがいいでしょう。Googleの調査の結果によると、YouTubeやトラベルブログは、現在では旅行に行こうと思いつく、主要な情報源となっていますし、旅行関連の視聴回数は毎年倍増しています。高品質の動画コンテンツを作成し、アップロードするということは、施設やアメニティだけにとどまらず、見込み客の関心ありそうな近隣地域や見所などを紹介するのに最善な方法です。

結論

これまでに述べたことをまとめると、次のようなことが言えます。

  • デザイン、機能共にモバイルデバイス上で優れたサイトを持つということは、今や例外ではなく常識である。訪問者は快適なモバイル体験を期待しており、その環境を与えるのは義務に等しい。
  • 日本国内に居住している旅行者が最大の市場かもしれないが、海外からの旅行者は飛躍的に伸びている。そこに参入するためには、彼らの使用言語で迎えてあげなければならない。日本市場においては、高品質且つ、日本特異な詳しい情報のウェブサイト体験を提供することが収益をあげることにつながる。
  • モバイルに最適化された、機能的な多言語予約エンジンはウェサイトへの訪問者を顧客へと変えられる。少なく見積もった機能は逆にお金を失うことになる。
  • 顧客に真の価値を提供したければ、自社のウェブサイトに直接来てもらい、しっかりと印象付ける他はない。そのためのコンテンツは大変重要である。ホテル広告などの利用を否定するわけではないが、優れたコンテンツを持つことで、費用をかけずに勝つことができる。