今日は午後から在日米国商工会議所(ACCJ)のプレゼンテーションに参加してまいりました。ACCJでは、IT及びソーシャルメ ディアに関する討論会が毎月開催されており、今回はコミュニケーションの構築、コンテンツの制作/管理をテーマにプレゼンが行われました。参加者でいっぱいになった会場を見て、専門業者である私 たち同様、実に多くの方々がこのようなテーマに興味を持っていることを実感しました。
このような討論会では、(特に話し手がソーシャルメ ディアサービスを専門に行っている場合)、ビジネスにソーシャルメディアを取り入れて運用することは、もはや必要不可欠であるという論調をしばしば耳にします。ソーシャルメディアは電話回線を引いたり名刺を持ち歩くのと同じように、今日のビジネスには必須のもの だという主張です。私はこのような話を聞くたびに、「本当にそうだろうか?どんなビジネスでもそう言えるのだろうか?」と疑問を感じていました。
確かにソーシャルメディアは、ジュースやスニーカーなどを販売する事業者であれば考えるまでもなく、販売促進はもとより、自社の商品を詳 しく紹介したり、リピーターを増やしたりするうえで必要となるでしょう。B2Cのビジネスを展開する企業にとって、ソーシャルメディアが必要不可欠であるといっても決して過言ではありません。
しかし、目に見える商品がないB2B業界ではどうでしょうか?主に企業間で相互にビジネスを展開している比較的知名度の低い中小企業は、東京だけでも何千社 とありますが、このような企業にもソーシャルメディアは果たして必要なのでしょうか?IP電話を取り扱う会社やウェブホスティングサービスを提供している 会社、会計事務所や翻訳会社、管理職スカウト会社やインテリアデザイン会社はどうでしょうか?データセンターのラックスペースを販売するのに語るべきス トーリーがあるでしょうか?会計事務所や労務士事務所にFacebookは必要なのでしょうか?
技術翻訳や生命保険など、飾り気のないサービスを「格好よく」見せのは難しいという考えの下では、ソーシャルメディアの必要性は感じないかもしれません。
ところが、こうした業界の皆さんにもソーシャルメディアを活用する余地は十分にあるのです。それは、製品やサービスそのものではなく、組織に関わる人々に焦点を当てた活用方法です。
- CEOや役員などの幹部層は、企業の理念を「擬人化」―つまり個人の目線から発信する―には最適な立場にいると言えます。ソーシャルメディアにおいてもそれは当てはまるでしょう。Google で「社長 ブログ」と検索すれば、多くの人がそれを実行していることが窺えます。
- ビジネスにおいて何らかのサービスを提供しているのであれば、有能な社員や専門分野に精通した社員は企業の“商品”の代弁者となるでしょう。このような社員を通して、ソーシャルメディアを自社のプロモーションを行う場として機能させることができます。
- 顧客と直に接しているカスタマーサービススタッフやその他の社員を自社の顔として「擬人化」することで、顧客の満足度を向上させ、適度なアプローチにより見込み客を囲い込むことができます。
企業や組織を擬人化することは、自社が何であるか、何をしているかを語るには最善の方法です。ソーシャルメディアであなたが提供する「顔」は製品であったりサービスであったりするべきではないのです。できればそれは本当の「顔」であるべきで、「個人」という「顔」を用いることで、組織をより身近 に感じさせることができます。
例として、最近弊社ではフィリピンの会社と契約しました。彼らのビジネスは広範囲に渡り、税務会計から会社設立関連の投資コンサルティングまで、全くもって小難しい サービスを提供しているのですが、そんな彼らも例に違わず、「会社概要」「サービス」「お問い合わせ」などを柱とした誰も読まないであろうコンテンツ満載 のウェブサイトを持っていました。
けれども、企業サイトは閲覧者を退屈させるのが目的ではないはずです。単なるウェブサイトであり、会社情報やサービスを提供するためのものなのです。誰もそれ以上のことをウェブサイトに期待したりしません。しかしそれと同時に、いくらウェブサイトを見たところで、実際にどんな人が働いているのか、全く検討もつきません。それはウェブサイトに「顔」が存在しないからなのです。今までに何千と見てきたウェブサイト同様、企業名と合わせて数日後にはすぐに忘れ去ってしまうものの一つに過ぎないのです。「ええっと、Tripleとかいう会社名だったと思ったけど、なんだったっけ・・・」という具合に。
彼らはFacebookページも持っています。まずFacebookページを見てみてください。
その後ウェブサイトに戻りましょう。
そしてまた、Facebookに戻ります。
多くの皆さんが画像をクリックしたのではないでしょうか。何枚見ましたか?またそれはその会社に対する認識をどのように変えましたか?“認識を変える”というの は適切な表現ではないかもしれません。もっと正確に言うならば、その写真を見ることで、あなたはその会社をはっきり意識したのです。私自身の場合、その会社 に対する認識は“2次元の実在しないもの”から“完全に具現化した人格”へと変化しました。
ウェブサイトを見ただけなら、その会社をどのように表現するでしょうか。おそらく単に「会社」で完結してしまうのではないでしょうか。でも、Facebookを見た今なら、「元気」、「フレンドリー」、「勤勉」、「聡明」といった表現が浮かんでくると思います。
Facebookページを見た後、「Triple i Consulting」について何がわかりましたか?当ててみましょう。どんなサービスを提供しているのか気になって、探しているのではありませんか?問 い合わせてみようという気になっているのではありませんか?私もそうでした。だからこそ問い合わせたのです。その見返りを考えれば、写真をアップするのはそんなに悪いことではないでしょう?
企業にとって、これは現実的な選択肢ではないかもしれません。会社の「顔」として、表にでたがる人はいないかもしれません。むしろビジネスによってはソーシャルメディアの「明るさ」よりも「暗がり」、つまり、露出することよりも匿名を重んじるところもあるでしょう。もしそうであるなら、ソーシャルメディアから得るものは少ないかもしれません。
けれどもその以外はどうでしょう?擬人化された会社に人格化されたブランド。それはYouTubeであり、LinkedInやFacebookの企業ページであり、機知に富んだスタッフが繰り広げるTwitterのフィードであるのです。
あなたの商品やサービスは特に人々の関心を引くものではないかもしれません。しかしそれらの背後に存在する人はどうでしょうか?たとえそれが元気な笑顔だけだったとしても、何かを伝えるには十分かもしれません。
結果ですか?ソーシャルメディア戦略は、「言うよりも行うが易し」です。